ああ無情! 宝くじで当たった大金が一夜にしてただの紙切れに!
人間、お金というのはいくらあっても困らないもの。実際、お金持ちほどカネに対する執着が強いと言われるが、欲をかくと痛い目に遭うこともある。
彼の場合はまさにその典型だろう。アンマンの助手ハレド君(当時28)が、宝くじで1等を当てたのは、4年前の11月のことだった。賞金は1万5千ヨルダン・ディナール。日本円に換算すると、2百数十万円相当だ。月収5百ドル(約5万5千円)前後のハレド君一家にとっては、大金である。
経済の発展が遅れているヨルダンでは、宝くじの賞金を投資する先がない。貯金すれば、インフレでどんどん目減りする。こつこつやっても仕方がないから、人々は一獲千金の投機に走る。賞金を投資会社に預けていた。
そんなハレド君も元金をさらに増やそうと、賞金で全部、イラク・ディナールを買った。これはまさに大冒険だった。なにしろ、当時のイラク通貨の相場は公定の百分の1に下落していたのだから。
「今が底値です。サダム政権が倒れたり、経済制裁が解除されたりしたら、ぜったいに上がります。なにしろ、イラクには石油がありますからね。そうしたら大儲けです」
と、彼は自信たっぷりだった。
ところがイラクは93年5月5日、突然国境を封鎖し、通貨の切り替えを発表した。イラク・ディナールはただの紙切れになり、ハレド君の2万ドルは消えてしまったのである。
結局、彼の手元に唯一残ったのは、賞金の一部で買ったFAX機だけ。ハレド君はこれを使って、海外の通信社の現地事務所に「不幸な惨状」を記したFAXを送りつけては、気を紛らわしているとか。